オランダにはこんな言葉があります。
神が世界を創ったが、我が国はオランダ人が造った
オランダ国土は日本の九州ほどの面積ですが、そのうち1/6は水路や運河が占めています。残りの5/6が陸地となっていて、そのうちの1/3が干拓地です。
(水路・運河が15%、元々の陸地が55%、干拓地が30%)
そのうえさらに国土の半分近くが海抜ゼロメートル地帯です。
オランダの国土は堤防(ダム)によって守られています。
運河の上の生活
運河に浮く住宅・ハウスボート
首都アムステルダムも運河と寄り添った街の1つです。
アムステルダムの運河は合計全長100km以上あり、そこには1500基以上の橋が架かっています。
運河は交通手段だけでなく生活の場ともなっており、この運河の上も大切な土地の一つとして利用されています。
オランダの運河には多くのハウスボートと呼ばれる船が係留しています。
ハウスボートには船としての機能は浮くという要素程度しかなく、住宅としての機能が備わっており、多くの人がこのハウスボートに住んでいます。
オランダには1万以上のハウスボートがあり、アムステルダムにはその約1/4の2256隻ものハウスボートがあり、居住している方がいます。
ハウスボートの歴史
始まりは出稼ぎ労働者のシェルター
ハウスボートの始まりは19世紀にはいってからでした。
当時のアムステルダムには農村部から都市部へ仕事を求めて出稼ぎ労働者や学生が多くやってきました。出稼ぎ労働者の数が住宅不足を加速させ、住む家のなかった者たちは古い貨物船で寝泊まりをするようになります。
船での生活は住民税もかからなかったため、収入の少ない労働者や学生に重宝されていました。その後に貨物船や使わなくなった船を改築して住宅としての機能が整えら、現在のようなハウスボートができあがりました。
人気物件
現在では電気、ガス、水道などのライフラインがすべて整っており、住所登録もしっかりとでき、一般的な家と何ら変わらない住宅になっています。※公的な住所登録ができるようになってからは税金もかかるようになっています。
逆に電気・ガスなどの各種設備が船に接続されているため、船として動くことはできません。
20世紀にハウスボートの数が急増したため、現在は新たなハウスボートを設けることはアムステルダムでは禁止されています。(係留地が余っていないため)
数に限りができたことで希少性が上がり、ハウスボートの価値は瞬く間に急上昇しました。
低収入の労働者、貧困層の隠れ家だったハウスボートは、今では高級住宅の位置付けとなっています。
高額維持費住宅
ハウスボートには2種類のタイプがあります。
- 貨物船を改築した鉄製の船のタイプ
- 家として造られたコンクリートの船のタイプ
鉄製タイプは船の形をしていることが多く、コンクリート製は長方形で見た目も家に近いのが特徴です。
鉄製タイプは錆びやすいため約5年ごとに点検が必要不可欠で、メンテナンスには専用業者さんにハウスボートごと造船ドックまで牽引してもらっての作業になるそうです。
それに対しコンクリートタイプはほぼメンテ不要な構造になっているようです。
土地代の代わりに運河代がかかり、鉄製タイプは定期的なメンテナンスも必要。
ハウスボートの税金やメンテナンス費用はとにかく高いらしく、維持費がかかりすぎるため、最近は売りに出す人も多いようです。
ハウスボート住宅保険も高いらしく、とにかくお金がないと維持できないため、高級住宅もとい高額維持費住宅になっています。
ハウスボートを見学しよう
アジア諸国でも似たようなハウスボートがある国もありますが、日本では馴染みのないハウスボート。
船内がどのようになっているのか気になりますが、勝手に上がり込むのは不法侵入、覗き込むのもプライバシーの侵害にあたりますのでやめましょう。
ハウスボートを見学・内観したい時はハウスボート博物館(Houseboat Museum)へと訪れましょう。ミュージアムでお宅拝見することができます。
ハウスボートミュージアム
アムステルダムの9ストリートの一角にあるハウスボート・ミュージアムは、一般のハウスボートに混ざって見分けがつかない、存在感の薄い美術館です。
入口は看板が立ってるだけなので入りづらいのですが、船内に入ると受付があります。
もと貨物船だったハウスボート博物館は鉄製タイプの仕様となっています。
もともとが船なので通風などの住宅環境計画は施されていません。見学に訪れた快晴の初夏、船内はとても暑かったです。
そしてやっぱり揺れます。強風の日を除けば運河が波たつ事はないのですが、観光地エリアの運河には遊覧船が通過します。
ハウスボート博物館は遊覧船の通る運河上にあるので、船が通過するたびにユラユラと揺れました。
船の構造上、壁面の低い位置には開口部がなく、壁面上部や天井に窓が作られていました。窓から見える街の風景が運河からの目線になるのがとても新鮮に映ります。
船内にはリビング、ベッドルーム、シャワー、トイレもあり、住宅機能が備わった立派な家となっています。
このハウスボートは1914年に造られてから1967年までの約50年のあいだ、砂や材木を運搬していた貨物船だったそうです。
貨物船として使用されていた時の船長の部屋も再現されていました。
貨物船としての役目が終わり、1967年に貨物室が居住空間へと改造されハウスボートへと生まれ変わりました。
ミュージアムの受付で日本語の案内書をお借りすることができるので、ハウスボートについて詳しく学ぶことができます。
営業時間:10〜17時(9月〜6月のみ月曜休館)
入場料:€4.50
ミュージアムカード:€3.50
住所:Prinsengracht 296K, 1016 HW Amsterdam
URL:House Boat Museum