オランダのロッテルダムから1時間半で訪れることができるベルギーのアントワープ(Antwerpen)には、大昔に巨人がいた伝説が残っています。
そのため広場には巨人を退治した英雄の噴水があり、市街地には巨人の手の彫刻、そして老舗店では巨人の手を模したビスケットが売られています。
日本ではアントワープといえばフランダースの犬でお馴染みの聖母教会とルーベンスの絵画が有名ですが、ベルギーではフランダースの犬は知れ渡っていません。
日本人からしたらフランダースの犬の舞台の街のイメージが大きいですが、アントワープでは巨人伝説が有名と、知識と現地とでギャップのある観光でした。
アントワープの観光情報をまとめたので散策の参考にしてみてください。
アントワープの歴史建造物
クリスマスマーケット観光も含めて訪れたアントワープ。1泊2日で歴史建造物や美術館、近代建築を巡り、アントワープグルメを食べてきました。
歴史建造物は無料で見学できるところが多かったです。
世界一美しい駅舎のアントワープ中央駅
19世紀末に建てられたアントワープ中央駅(Antwerp Central Station)は、オランダとベルギーの首都ブリュッセルの中間にある主要なターミナル駅です。
プラットホームの全長は186mと長く、多くの電車が収容できる駅となっています。
ベルギー産の大理石を仕様して建てられた駅舎はまるで宮殿のような佇まい。20世紀後半には国の重要文化財に認定され、現在でも建設当時の美しさが維持されています。
2010年にはヨーロッパで最も美しい駅に選ばれ、2014年にはグローバルWebニュースサイトで世界で最も美しい駅と称されています。
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フランダースの犬に登場する聖母大聖堂
旧市街の中央にある聖母大聖堂(Onze-Lieve-Vrouwekathedraal)は、19世紀の児童文学で有名なフランダースの犬にゆかりのある教会です。
14世紀中頃から約200年の時をかけて建てられたゴシック様式の大聖堂は各所の彫刻がとても美しい建物。125mの高さのある塔には4月〜9月の間の水曜日のみ登ることができるそうです。
大聖堂の中には16〜17世紀に活躍した画家ルーベンスの絵画が飾られています。フランダースの犬の主人公ネロが憧れていた画家ルーベンス。
ネロが毎日眺めていたルーベンス作の”聖母被昇天”、ネロが見たかった”キリストの降架”、そしてネロが最後に見たルーベンス作の”キリストの昇架”の実物を見ることができます。
大聖堂の前にはネロとパトラッシュが一緒に眠る像が飾られています。これは2016年に日本とベルギーの友好150周年を記念して作られたそうです。
これだけフランダースの犬との繋がりがある聖母大聖堂ですが、実はベルギーではあまり知られていません。
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パイプオルガンの美しい聖パウロ教会
16世紀に修道院が建てられ、17世紀にかけて建設された後期ゴシック様式の聖パウロ教会(Saint Paul’s Church)。20世紀に火災により甚大な被害を受けており、現在の建物はその後に再建されています。
17世紀のパイプオルガンがあることでも有名な教会で、建物内を見たかったのですが冬季は週末しかオープンしておらず入れませんでした。また改めて訪れたいです。
祭壇の美しい聖アンドリュー教会
16世紀に建てられた聖アンドリュー教会(St. Andrew’s Church)。訪れた日は改修工事の真っ只中で、外観のほとんどが覆われてました。
教会の祭壇は18世紀に活躍したベルギーの彫刻家の傑作といわれている美しい祭壇です。もともとは別の修道院のために作られた祭壇らしいですが、現在は聖アンドリュー教会の祭壇になっています。
市役所と広場とギルドハウス
アントワープの旧市街の中心にあるマルクト広場(Grote Markt)は13世紀頃から広場として市民の集う場所だったそうです。
広場の中央にあるブラボーの噴水(Brabofontein)は1887年に建てられました。巨人伝説のあるアントワープ。青年ブラボーが巨人の手を切り落とし、その手を川に投げた姿をモチーフにした噴水です。
そんな広場に面したお城のような建物のは16世紀に建てられた市役所(Stadhuis Antwerpen)です。2018年に大規模な修復工事がされていますが、豪華で美しい様相は昔と変わっていません。
大規模工事後の2022年からは市役所の1階を無料で見学できます。建物の歴史や改修工事の写真が飾られていました。
今でも市役所として使われているため1階以外は見学できませんが、年に数回だけ建築ツアーを開催しているそうです。
マルクト広場に面したギルドハウス(Gildehuis)もアントワープの観光名所です。ギルドハウスとは昔の職人さんたちが集まって会議や集会を開く場所でした。アントワープのギルドハウスは最も古いもので16世紀に建てられています。
旧城門の観光案内所
川沿いにある要塞のような建物ヘットステーン(Het Steen)は、アントワープに現存する建物で最も古く、13世紀初頭に建てられた城門の一部です。14〜19世紀の500年間は刑務所として使われていました。
現在は観光案内所になってます。
建物の屋上からは川が一望できました。雨あがりで水が濁ってて、雲も多く、風も強くて寒くて、早々に退散してしまいましたが、夏季や天気の良い日はもっと美しい眺めかもしれません。
ヘットステーンの隣には1888年に建設された装飾の美しい屋根が並んでいます。もともとは川の埠頭だったそうですが、現在は改修工事中で新しい施設として生まれ変わるようです。
旧シティーホールのショッピングモール
1908年に建てられた旧シティーホール(Stadsfeestzaal)は、かつてはアントワープで最も有名だったイベントホールでパーティー会場でした。
2000年に火災により建物が全焼し、2007年に再建され、現在はショッピングモールになっています。
イベントホールだった部分は完全再現されており、金箔で仕上げた装飾、寄木細工、オリジナルの彫刻などと豪華な仕上がりです。息をものむ美しさでした。
40店舗以上の様々なお店がはいったショッピングモールには、オランダでもお馴染みのアジアンスーパーマーケットも入ってました。
アントワープの美術館
アントワープは魅力的な美術館が多かったです。ですが1泊2日の日程では2〜3ヶ所を訪れるのが限界でした。見たいところを全て回るには時間が足りなかったので、また訪れたいです。
ルーベンスの家
17世紀に活躍した画家ルーベンスが住んでいた邸宅ルーベンスの家(Rubenshuis)は現在は美術館です。
ルーベンスの作品の他に、家族と暮らしていた家、そして様々な作品を生み出したアトリエを見学する事ができます。
現在は改装中で閉館していますが、2024年の夏には新しいスペースが増築してリニューアルオープンする予定です。
アントワープ王立美術館
19世紀の風格ある建物のアントワープ王立美術館(KMSKA)。1階は20世紀の作品のみが展示された現代アートスペースになっており、2階には16世紀17世紀のヨーロッパで芸術が栄えた時期のアートが展示されています。
2022年にリニューアルオープンで展示スペースが40%増築され、より多くの展示を見れるようになりました。駅や旧市街地から離れているのでアクセスが不便ですが、旅程に余裕があったら訪れたい美術館です。
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印刷所の歴史博物館
プランタンモレトゥス博物館(Museum Plantin-Moretus)は16世紀の印刷所の歴史博物館です。博物館には歴史的な書籍や版画が豊富に保存されています。
家族経営だった印刷所にはアンティーク家具、芸術作品、そして金の革で覆われた多くの木彫りが備え付けられています。また印刷所の家族は画家ルーベンスと友人だったそうで、ルーベンスの作品も見ることができました。
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ファッション博物館
モード博物館MoMu(MoMu – ModeMuseum)は衣類、靴、テキスタイル、アクセサリー、レースなどのコレクションを3万点以上も有しているファッション博物館です。
19世紀の歴史ある建物ですが、館内は21世紀にリノベーションされており、印象的な木製階段があるそうです。
チョコ博物館
世界最大のベルギーチョコレート博物館のチョコネーション(Chocolate Nation)は体験型のチョコミュージアムです。
ツアーに参加するとカカオからチョコができるまでを学ぶことができるそうです。館内のお土産屋さんでベルギーチョコのお買い物もできます。
港の博物館
19世紀末に約200万人の人々がアントワープから蒸気船に乗って北米へと移民しました。夢と希望を持ってニューヨークへと渡った人々の思いや、当時の船旅での様子などを展示しているのがレッドスターライン博物館(Red Star Line Museum)です。
かつての船会社の倉庫だった建物が博物館になっています。
博物館の前には港で使われていたクレーンのコレクションも見ることができます。かっこよかったです。
旧お肉屋の音楽博物館
16世紀に建てられた7階建ての煉瓦造りの建物が特徴的なアントワープ音楽博物館(Museum Vleeshuis)はもともとはお肉屋さんでした。そのため現在でもお肉屋さん(Vleeshuis)と呼ばれています。19世紀には建物は芸術家の手に渡り、オペラや演劇が上演されていたそうです。
20世紀以降は建物を歴史的建築物として保存するとともに、博物館として利用されるようになりました。アントワープ王立音楽院の融資により運営していることから、アントワープの音楽の歴史をメインに展示しています。
アントワープの近代建築
アントワープ旧市街地の北部にある港周辺に見逃せない近代建築がありました。
ポートハウス
廃墟だった消防署をリノベーションしたハーベンハウス(Havenhuis)はアントワープの港を管理する港湾管理局の建物です。
まるで宇宙船のような特徴的な建物は世界で活躍する建築家ザハ・ハディドのデザイン。見た目だけでなく、エネルギー貯蔵システムや水消費量制御など未来を見据えた設備設計がデザインされています。
月に何回か開かれる建築ツアーに参加すると館内見学ができるようです。1階のカフェは誰でも利用できるので、チラッと見学はいつでもできます。
ただし重要人が訪れる会議がある日は一般の入場は制限されています。訪れた時がまさしくその日で館内に入れませんでした。残念。
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展望美術館MAS
2011年にオープンしたMAS(Museum aan de Stroom)は世界各地の多様なのコレクションを有する美術館です。10階建ての建物の8つのフロアは展示室。無料で見れる展示もありました。
建物はオランダの設計事務所Neutelings Riedijk Architectsがデザインしています。
建物の外周に沿うようにエスカレーターが設置されており、建物内をグルグルする様に登って行くと屋上まで上がる事ができます。屋上は誰でもアクセスでき、60mの高さからアントワープの街を眺める事ができます。
アントワープの食べ物
アントワープはベルギーワッフルだけではありません。食べたい物がたくさんありました。
フィリップス・ビスケット
アントワープのお土産でお馴染みのフィリップスビスケット(Philip’s Biscuits)。手の形をしたビスケットは伝統特産品に指定されている昔ながらのビスケットです。
巨人伝説が存在するアントワープ。川岸のお城に住む巨人は川を渡る通行料を払えない人の手を切り落としていたそうです。そんな巨人を退治した英雄が、最後に巨人の手を切り落として川に投げ捨てたとの言い伝えが残っています。
アントワープの街中きは巨人の手の彫刻もありました。
チョコレート・ライン
18世紀の宮殿の中にあるチョコレートライン(The Chocolate Line)はアントワープの高級チョコレート屋さん。
チョコレートのプロ、ショコラティエ、デザイナーの3人で作り上げるチョコレート見た目が美しくユニークな形が特徴的です。チョコは1つからでも購入できるので自分用のお土産にもできます。
老舗パーラーのヴァン・ヘッケ
ヴァン・ヘッケ(Wafelhuis Van Hecke)は、アントワープで最も古いパーラー(スイーツカフェ)です。創業120年を超えるヴァン・ヘッケでは、ベルギーの昔ながらのスイーツを食べることができます。
ワッフルやベルギーガレット、パンケーキやアイスクリームなどを食べながら一休みするのみ最適なお店です。
フリッツアトリエ
オランダのデン・ハーグに2016年にオープンしたフライドポテト専門店のフリッツアトリエ(Frites Atelier)は、現在はベルギーでチェーン展開しています。
サクサク&ホクホクのフリッツにオリジナルのソースをたっぷりかけて食べる、スナックというよりは食事タイプのフライドポテト屋さんです。
なかでも人気のビーフシチューは濃厚なソースとお肉がたっぷりかかってて、とても美味しかったです。お好みで自家製マヨネーズを追加することもできます。
自家製ドリンクがいくつかあり、レモネードはサッパリとしてたので、濃厚なフリッツとの相性がとてもよかったです。
創作寿司レストラン
日本人シェフがプロデュースする創作寿司レストランのKo’uzi Sushiでは、ここでしか食べれない和がありました。
ヨーロッパ風にアレンジしていますが、海外のSUSHIとは全く異なり、これぞ和の創作寿司が食べれるレストランです。
押し寿司や手毬寿司のような可愛らしいクリエイティブ寿司は全14種類。薬味やごま油などの隠し味がきいてて、とても美味しかったです。
その他にも握り寿司や巻き寿司もあり、メニューはとても豊富でした。
アントワープのシティーパス
初めてのアントワープ観光。美術館巡りや建築巡りをしたかったので、アントワープのシティーパスを利用してみました。
アントワープのシティーパスでは、15ヶ所の美術館、3つの教会、3つのアトラクションが無料で入場でき、市内の公共交通機関(バス・トラム)が無料で乗車できます。
その他にもシティーパスで割引になる施設やお店がありました。
旅先ではバスやトラムのチケットの購入方法が分からなかったりするので、乗車券付きのシティーパスは便利でお得だと思います。
アントワープの観光マップ
紹介した観光情報を地図にまとめました。赤が歴史現造物、黄色が美術館、緑が近代建築、紫が食べ物屋さんです。
アントワープに宿泊
夜に出歩くことも想定し、安全を考慮して、マルクト広場まで徒歩3分のアパートメントホテルThe Old Town Lodgeに宿泊しました。
たった1泊にはもったいないくらい広いアパートで、キッチンダイニング、リビング、寝室と3部屋もありました。各部屋に暖房がついていて暖かくて快適でした。
オランダからアントワープまでの移動
アムステルダムからアントワープ中央駅までは高速列車Eurostar(ユーロスター)で1時間15分です。
またベルギー鉄道のIC Brusselでも1時間50分で訪れることができます。
鉄道チケットは€20〜80とお値段が高めです。なのでオススメなのはFlix Bus(長距離バス)での移動です。
アムステルダムからアントワープまではバスでも片道2時間です。前日でも€6.99〜の低価格のチケットがありました。
早朝便から夜遅い便まであるので、日帰りでもアントワープ観光が楽しめます。