セルフエンプロイビザ(個人事業主ビザ)は2017年以降の申請では就労ビザが付帯されなくなりました。
筆者は2016年に申請手続きしたため、個人事業主ビザでありながら被雇用者として自由に働ける就労ビザもついてきたためアルバイトも可能なんですが、2017年以降に個人起業ビザを申請した場合は自身のビジネス上でしか働けません。
それでもオランダでの起業は他国に比べて容易な手続きと少ない資金で事業が始められるため、アイディアと行動力で成功している方が多くいらっしゃいます。
まず個人事業主ビザを申請する前に、当たり前ですがどんなビジネスを始めるかを決めます。(後々変更もできますが、何をするかが無いと何も始まりません。)
決めることは
❶ビジネス内容
❷ターゲット
❸月間・年間の収入と経費の予想。
この3つを押さえておけばギリ何とかなる範囲だと思います。
大まかなビジネス内容が決まったら英文のビジネスプランを作成しましょう。ここまでは渡航前に済ませてください。
ここからはオランダ到着後にする手続きを順にご紹介します。
①住民登録が可能な家を探す
オランダの賃貸物件は住民登録(registration)できる家とできない家があり、また住民登録できる人数も家によって異なります。(この住民登録ができないと各種手続きができません。)
家の賃貸契約を結ぶには、仕事の契約書や収入証明などが必要だったりします。それらを用意できないと保証金として半年分の家賃を前払いする方法もあるようです。
オランダ入国後、最初の難関が家探しになると思います。日本でネットを介して事前に決めてしまう方法もありますが、あまりオススメできません。賃貸にあたっての詐欺が多いからです。
何とか家が決まったとして話を進めていきます。
②デン・ハーグの日本大使館で戸籍謄本を英訳
パスポート、日本で取得した戸籍謄本を持って、日本大使館にある英訳申請書類を記入します。手数料は10ユーロくらいだった気がします。
発行までに1週間ほどかかるため、申請と受取りの2回ほど大使館に出向くことになります。(地域によっては月1回の大使館出張サービスを利用してご近所で申請ができます。)
詳細は大使館のホームページでご確認ください。
戸籍謄本の英訳書類を受け取ったら、その足でオランダ外務省へ行きリーガリゼーション手続きをしてもらいましょう。(こちらもデン・ハーグにあります。)
パスポート、戸籍謄本と英訳書類、そして日本の外務省で発行してもらったアポスティーユ証明と手数料(2016年は€10でした)を提出して即日でリーガリゼーションしてもらえました。(オランダ外務省のリーガリゼーション手続きの時間が午前中のみなのでお気をつけください。)
リーガリゼーションすることで、オランダでもオフィシャルな書類となります。パスポートと同じくらい大切に管理しましょう。
※②の内容は家探しと同時進行で行います。
※渡航前に戸籍謄本とアポスティーユ証明は準備してきましょう。
③市役所で住民登録の事前相談
ビザがないため賃貸契約があっても住民登録はまだできませんが、事前に相談することで仮登録をしてくれました。
自宅の地区の市役所へパスポート、賃貸契約書、リーガリゼーション書類を持って行き、(できないことは分かっているけども)住民登録したいと伺ってみたところ、
その場で市役所のサイン入りの「Bewijs van Bekendmaking de Basisregistratie Personen(住民登録用紙)」を作ってもらえて、その後の申請が少しだけスムーズになりました。
※市役所は地域によってアポが必要とか、アポ無しは午前中のみ受付なところもありますので事前にホームページで確認しましょう。
※サイン入りの住民登録用紙を発行してもらえると、そのあとのBSNナンバー取得までが早くなる場合があるためであって、この手続きはしなくても問題ありません。筆者の場合はダメもとで尋ねたら、担当者さんが対応してくれたラッキーなパターンでした。
④IND(移民局)にアポを取ろう
IND(移民局)のアポイントは電話での申し込みとなります。
時期にもよりますが、場所によっては3週間待ちだったりしますので早めにアポを取ったほうがいいです。
どうしても直近で予約を取りたい場合は、電話で近日中にアポが取れるINDがないか聞いてみましょう。アムステルダムは比較的いつも混んでますが、他都市では予約が取りやすいこともあります。
また予約の時に申請に必要な書類も確認しましょう。
筆者の時はパスポート、ビザの申請書類、リーガリゼーション書類と戸籍の英訳、ビジネプラン、申請費用(2016年は約€1300)だったと思います。
でも不安だったので、持ってる書類全て持って行きました。
※ビザの申請書類(Application for the purpose of residence of ‘to work on a self-employed basis’ (foreign national))はINDのHPからダウンロードできます。
※③の項目で市役所でBewijs van Bekendmaking de Basisregistratie Personen(住民登録用紙)を発行してもらえた場合は、こちらも提出してINDのサインをもらってきます。次のステップで役立ちます。
問題なければ即日に6ヶ月の一時滞在許可が降り、3ヶ月以内に申請用紙に記入した住所に手紙が届くと言われると思います。その手紙に追加で提出する書類の内容が書かれてきます。
この日に指紋データと証明写真が撮られます。この写真が最終的に発行されるIDカードの証明写真になるので、お化粧をお忘れないようにしましょう。
ビザの交付までは3〜6ヶ月待つこととなるかと思います。
④市役所で住民登録、BSNナンバー取得
市役所で住民登録をするのには賃貸契約書、INDで発行してもらった一時滞在許可証、リーガリゼーション書類が必要です。
③でBewijs van Bekendmaking de Basisregistratie Personen(INDのサイン入り)を獲得した場合は一緒に提出しましょう。(これがあるとBSN発行までにかかる時間が1週間くらい短縮されます。)
申請後1ヶ月くらいでBSNナンバーお知らせの手紙が届きます。
BSNナンバーが今すぐ必要な場合は申請から1〜2週間後くらいに市役所に訪れて、銀行口座を作りたいからBSNナンバーを教えてもらえないか頼んでみましょう。
担当者がいい人であれば?BSNを含めた個人情報の書類をコピーしてくれます。書類には「オフィシャルなものではない」との記載はありますが、この用紙は本通知書と同様の効力が備わっています。
⑤KVK(商工会議所)で事業登録
事業はKVKに登録した段階でビジネスを始められますので、BSNナンバーが取得できたらKVKのホームページより予約をとります。
KVKのホームページはオランダ語と英語表記があるのですが、グーグル翻訳などを使いながらオランダ語表記の方で進めた方が、当日の手続きがスムーズになります。
オランダ語のホームページから、
登録→新規登録→個人事業主→3ステップ登録
と進むと予約の前に「事前準備」という項目がでてきます。
記入できる部分だけでも入力してから予約を取ると、当日に既にシステム上に反映されてるので短時間での登録ができます。分からないところはスキップしておいても大丈夫です。
英語表記のページでも予約は取れますが、予約前の事前準備項目がKVKのシステムと連動されていないようで、当日担当者が全て再入力していくため時間が少しかかります。
ビジネプラン、一時滞在許可書、BSNナンバーの手紙(もしくは⑷で手に入れたオフィシャルではないBSN書類)、登録料金(50ユーロ)、事業証明書発行料(15ユーロ)で1時間くらいでささっと終わります。(担当者にもよりますが)。
⑥個人とビジネスの銀行口座開設
KVKの書類、一時滞在許可書、BSNナンバーの手紙(または④で手に入れたオフィシャルではないBSN書類)があれば即日で口座開設ができます。
※個人口座はBSNナンバー取れた時点で作ることができます。直ぐにでも送金して手持ちのお金が欲しいなどの緊急時は先に個人口座を作り、KVKの登録後にビジネス口座を開くことも可能です。
⑦オランダの公認会計士にBECONを作ってもらう
ビジネス口座を開設したら最低4500ユーロ入金し、ビジネスプランを基にオランダの公認会計士にビジネス口座の証明書BECONを作成してもらいましょう。
だいたい1週間くらいで作ってもらえますが作成料がかかります。(€300ほどかかりました。)
公認会計士さんは掲示板などから見つけることができると思います。(自分がどうやって探したか忘れてしまいましたが、グーグル検索とかだったと思います。)
⑧INDに申請してから2〜3ヶ月後、手紙が届いたら…
INDから追加書類の要請の手紙が届いたら、KVKの書類、銀行の書類、BECONを郵送します。(送付する書類に関してはINDの手紙に記載されていますので、そちらを確認してください。)
早ければ1ヶ月以内にINDから再度手紙が届き、ビザ発行の案内とIDカードの受取りのお知らせがまいります。
届いた手紙とパスポートを持って指定されたINDへ出向くとIDカード(滞在ビザ)が受け取れます。(INDの予約が必要です。)
名前などの個人情報とビザの有効期間などしっかり確認して受取りましょう。
とんとん拍子に進めば、オランダ到着後1か月以内に事業がスタートでき、3ヶ月以内にはビザが交付されると思います。
ただしビザの手続きや法律がコロコロ変わるのと、各種申請はその時の担当者にも左右されてしまうので、心配な方は弁護士さんや移住サポート業者さんに依頼する方が賢明です。
自分で手続きする限り「マジで!?」って出来事もあると思います。
でも、全くゆかりもない外国でビジネスを始めようと遥々渡航してきたモチベーションを忘れずに、諦めないで頑張ってみてください。
きちんと下調べを行えば、情報は得られます。それでも分からないことは聞きましょう。役所の方もINDの方も親切に教えてくれる方が多かったです。
意外とビザが取れた後のオランダ生活の方が「マジで!?」って事も多いので、その事前練習だと思ってみてください。
Good Luck!