2025年5月、ロッテルダムに新たなアートスポットが誕生しました。
その名もFenix(フェニックス美術館)。
世界初の“移民”という壮大かつ普遍的なテーマを掲げる現代美術館です。
そして何より注目すべきは、そのインパクト抜群な建築デザイン。建物中央にそびえる、近未来感あふれるシルバーの螺旋階段…!
「これは見に行かねば!」と、さっそく現地を訪れてきました。
旧倉庫から現代アートの舞台に
Fenix美術館は、1923年に建てられた港湾倉庫Fenixloods(フェニックス・ルードス)をリノベーションしたもの。
場所はロッテルダムの南側、ホテルニューヨークのすぐ向かいにあります。
この倉庫、実はかつてホーランド・アメリカ・ラインの発着拠点として、何百万人ものヨーロッパ移民が旅立っていった歴史ある場所なんです。
建物の再生を手がけたのは、オランダの建築事務所Bureau Polderman。
歴史的な風合いを大切に残しながら、現代美術館としての機能性や地域とのつながりをうまく融合しています。
建築のハイライト:トルネード階段
Fenixといえば、やはりこのトルネード階段!
建物の上部から銀色に輝く渦巻き状の構造がひょっこり顔を出しており、遠くからでも目を惹きます。
この螺旋階段は、中国の建築家マ・ヤンソン(Ma Yansong)率いるMAD Architectsによる設計。
名前の通り「トルネード(竜巻)」のように、ダイナミックな動きを感じさせる造形美です。
中に入ると、目の前にドーンと登場。高さ30メートル、ダブルヘリックス(らせん二重構造)のステンレス製階段はまさにアートの塊。
実はこれ、美術館の入場口でもあるんです。
この階段は「移民の旅路」を象徴してデザインされていて、2本の階段が途中で交差・接続しながら上っていく構造に。
歩いているだけで「移動」「出会い」「分岐」といった移民の物語が自然と浮かんでくるようでした。
階段表面は鏡面仕上げなので、写真を撮るとトリックアートのような不思議な写り方に。
自分の姿が伸びて、ちょっとスタイル良く見えますw。
登り切ると、ロッテルダムの街並みとマース川を一望できる高さ24メートルの展望台へ。
ここからの眺めは本当に圧巻。見上げても見下ろしても、角度によって全く違う表情を見せてくれる建物です。
1階の展示:移民の物語にふれる
Fenix美術館の1階(エントランスフロア)には、誰でも無料で見られる2つの展示室があります。
1つ目は写真展。ここでは過去5年間に収集された150点以上の歴史的・現代的なアート作品やオブジェクトが並んでいて、移民の視点から描かれた世界が垣間見えます。
もう1つは「スーツケース迷路」と呼ばれるインスタレーション。
なんと2000個のスーツケースを使い、移民の個人の物語を物理的に体験できる迷路になっているんです。
1898年以降の実際の移民たちの記録が詰まっていて、歩きながら歴史を感じることができました。
上階の展示:倉庫の雰囲気を活かした現代アート空間
トルネード階段を登った2階エリアでは、よりコンセプチュアルな現代アート展示が広がっていました。
旧倉庫の無機質な雰囲気をそのまま活かした空間は、どこかニューヨークのギャラリーのような洗練された空気感。
特に事前知識なしで訪れても楽しめる作品が多く、アート初心者にもおすすめできる内容でした。
地域をつなぐ美術館
Fenix美術館があるカテンドレヒト地区は、かつてヨーロッパ大陸初のチャイナタウンの一つでもあり、多文化が交差する街。
美術館の設立には、そんな地域の歴史を掘り起こし、現代の移民問題に対して多角的で共感的な視点を提供するという意図が込められているそうです。
敷地内には、誰でも立ち寄れる広場のようなスペースやイベントエリアもあり、まさに地域に開かれた美術館。
建物の一角にはアイス屋さんがあり、暑い日には大行列でした。
そして隣のFenix Food Factoryというフードホールでは、クラフトビールでひと休みできます。
アクセスと水上タクシー体験
Fenix美術館の最寄駅は、メトロのRijnhaven駅ですが、おすすめのアクセス方法は水上タクシーです。
ロッテルダム名物の小さなボートで、ルーヴェハーフェン(マリタイム・ミュージアムの近く)から、ホテルニューヨーク前までアクセス可能。
エラスムス橋の下をくぐり、旧港の街並みを眺めながらのミニクルーズ体験は、まさに観光気分。
スピード感もありちょっとしたアトラクション感も!料金は5ユーロほどでした。
おわりに
Fenix美術館は、歴史・建築・現代アート・社会的メッセージが融合した、唯一無二の場所でした。
とくに「トルネード階段」は、アートとしても建築としても、わざわざ訪れる価値あり。
ロッテルダム観光に行くなら、ぜひルートに入れてみてください。
未来的でありながら、人間の物語に寄り添った場所。きっと心に残る体験になるはずです。