チェコ共和国、首都プラハより南へ車で1時間半ほど行ったところにある小さな町チェスケー・ブジェヨヴィツェ(České Budějovice)。
いたって何もない町ですが、かのバドワイザー発祥の地であります。
バドワイザーといえばアメリカのビールと連想しますすが、なぜチェコの田舎町が元祖とされているのか。そこには知られていない裏話がありました。
チェコのバドワイザーの歴史
チェスケー・ブジェヨヴィツェでは13世紀頃からビール醸造が始まったとされています。
ローマ皇帝のための王立醸造所が設立されたほど、ビール醸造は主要産業として栄えていました。
他の地域のビールと区別するため、この地のビールはバドワイザー(Budweiser)と呼ばれていました。町名のブジェヨヴィツェ(Budějovice)がドイツ語ではバドワイズ(Budweis)と呼ばれており、そこからバドワイザーと名付けらたようです。
16世紀までにチェコの主要産業となったビール醸造業ですが、その後30年にも及ぶ戦争により一時荒廃してしまいます。
18世紀後半にようやく醸造所が再設立され、19世紀にようやくバドワイザービールの醸造を再開し、チェコ国内のみならず海外へも輸出を始めました。
19世紀後半、1895年に正式にブジェヨヴィツェ・ブドヴァル国営会社(Budweiser Budvar Brewery)が設立されバドワイザービールを販売しています。
が、法的にバドワイザービールの商品名で販売できるのは主にヨーロッパのみとなっています。
アメリカのバドワイザーの歴史
チェコのバドワイザーがアメリカへの輸出が始まったのが1875年です。
そのビールのクオリティーに目をつけたアメリカ人がバドワイザー醸造所のプロセスをコピーした新たな醸造所をアメリカに建設します。その醸造所で造られたビールはバドワイザー(Budweiser)と命名され、1876年にアメリカでの商標登録を行った事がアメリカのバドワイザーの始まりです。
完璧なるパクリ醸造所のビールですが、チェコのバドワイザー企業が正式に設立されたのより先に商標登録がされいます。
アメリカのバドワイザーとチェコのバドワイザーは商標登録を巡り紛争状態となりますが、最終的にチェコ側がアメリカでの商標権を放棄することで収拾しました。
現在はチェコのバドワイザーはアメリカではチェコヴァル(Czechvar)と呼ばれており、チェコのバドワイザーをバドワイザーの商品名で販売できるのはヨーロッパのみとなっています。
商標登録争いが終わった後にアメリカのバドワイザーは、日本を含む各国で商標登録を素早く行い、チェコのバドワイザーが築き上げてきたネームバリューを世界各国から奪い取ってしまいました。これにはさすがにチェコのバドワイザーも激怒し、他国での商標登録争いは今でも続いているようです。
が、一度登録された商標権を覆すのは容易ではありませんし、アメリカのバドワイザーが出まわっている国では、チェコのバドワイザーはチェコヴァル(Czechvar)と名付けられています。
日本でもバドワイザーはアメリカのビールという印象しかないので、今更バドワイザーはチェコのビールと言われてもピンとこないでしょう。
アメリカのバドワイザーは確かにアメリカの醸造所で作られているビールなので、アメリカのビールなのですが、そのビールが作られる工程の技術の歴史はチェコが起源となっている、なんとも複雑で因縁が深いビールです。
あっさりとした喉越しの良いバドワイザーですが、その背景はドロドロでした。
商標権、特許の力が垣間見れるビールの話となってしまいましたが、チェスケー・ブジェヨヴィツェにあるバドワイザー醸造所では工場内が見学でき、併設されているレストラン・バーで元祖のバドワイザーを味わう事ができます。
元祖のチェコ産バドワイザーと、本家のアメリカ産バドワイザー。
果たして味は一緒なのかどうか味比べしてみるのも面白いかもしれません。
チェスケー・ブジェヨビツェ駅から徒歩約30分
住所:4, Karolíny Světlé 512, České Budějovice 3, 370 04 České Budějovice, チェコ
URL:Visitbudvar.cz
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