オランダには
神が世界を創ったが、我が国はオランダ人が造った
という面白い格言があります。
格言が生まれるほど苦労して、オランダの国土を築いてきたのもまた事実です。

オランダの国土は日本の九州ほどですが、その国土の1/6は水路や運河です。
その残りの陸地(5/6)のうちの1/3が干拓地。
さらに国土の半分近くが堤防に囲まれた海抜ゼロメートル地帯。
堤防やダムに守られた国です。

アムステルダムも水路と運河とは切り離せない街の1つです。
アムステルダムの運河は100km以上あり、そこには1500以上の橋が架かっています。
運河は交通手段だけでなく生活の場ともなっており、この運河の上もオランダでは大切な土地の一つとして利用されています。

オランダの運河には多くのハウスボートと呼ばれる船が係留しています。
これらの船は、船としての機能は浮く”という要素程度しかなく、住宅”としての機能が備わっており、多くの人がこのハウスボートで生活しています。

オランダには1万以上のハウスボートがあり、アムステルダムにはその約1/42256隻もあります。

このハウスボートの始まりは19世紀後半の住宅不足期でした。
当時アムステルダムには農村部から都市部へ仕事を求めやってきた労働者や学生が多くいました。彼らは住む場所がないために古い貨物船などを利用して生活しはじめたのです。
当時は税金もかからないため、収入の少ない労働者や学生に重宝されていました。
その後、貨物船や使わなくなった船を改築し、家としての機能が整えられました。

今では電気、ガス、水道などの住宅としての設備はすべて整っており、公的な住所登録もしっかりとできるため、とても人気のある物件です。
逆に各種設備が接続されているため、船として動くことはできなくなっています。

近年はハウスボートが増加したため、現在は新たなハウスボートを停泊することはアムステルダムでは禁止されています。
禁止というか、係留地が余っておりません。

数に限りがあるため、ハウスボートの価値は瞬く間に急上昇。
低収入の労働者のための住宅だったのに、現在では高級住宅の位置付けです。

ハウスボートには2種類のタイプがあります。
❶貨物船を改築した鉄製の船のタイプ、
❷家として造られたコンクリートの船のタイプ。

鉄製の船は錆びやすいため、約5年ごとにメンテナンスが必要なのに対し、コンクリートタイプはメンテ不要なハウスボートです。
見た目は鉄製は船の形をしていますが、コンクリート製は長方形で見た目も家に近いです。

ちなみに税金やメンテナンス代はとにかく高いらしく、維持費がかかりすぎるために手放す人も多いようです。
土地代の代わりに運河代がかかり、鉄製の船は定期的なメンテナンスも必要。メンテナンスするにも船(家)は動かないので、船の業者さんに船(家)ごと牽引されて造船所まで運ばれるようです。
住宅保険も高いらしく、とにかくお金がないと維持できないため、高級住宅もとい”高額維持費住宅”ですね。

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アジア諸国でも似たような状況からハウスボートがある国も多いですが、日本では馴染みのないハウスボート。
とっても気になりますが、勝手に上がり込むのは不法侵入、覗き込むのもプライバシーの侵害にあたりますのでやめましょう。

それでもやっぱり気になります。

そこでオススメがハウスボートミュージアム。意外と知られていない美術館という名のお宅拝見、船拝見です。

9ストリートの一角にあるのですが、あまり知られていないためか他のハウスボートに混ざってヒッソリとある感じです。

そして入口は看板が立ってるだけなので勝手に入っていいものか不安になります。
が、勝手に入って大丈夫でした。

船内に入っていくと受付があって、そこで入館料を払います。お一人4.5ユーロです。
ミュージアムカードがあると3.5ユーロに割引してもらえます。また日本人と伝えると、日本語の案内ノートを貸してくれました。

このハウスボートは1914に貨物船として造られ、その後1967年までの約50年の間、砂や材木を運搬していたようです。
貨物船として使用されていた時は、船長とその家族は甲板室で暮らしていました。
その当時の部屋がミュージアムの入口に再現されています。

狭すぎて写真が撮れないようなスペースで家族4人が暮らしていたそうです。
押入れみたいな狭いベッドに、水道が1個あるだけのキッチン。トイレはバケツだったそうです。

1967年にハウスボートとして改築され、貨物室とされていたスペースが住宅へと生まれ変わりました。
まずはキッチン。
このミュージアムでは受付として使われており、お土産も売っていました。

キッチンとしては十分すぎる広さだと思います。
この日は天気が良かったので、天窓からの日差しが気持ちよく、とても船内ともは思えない開放的な印象の受付(キッチン)でした。

リビングはわりかし落ち着いた雰囲気で作られていました。天窓もあるものの明るすぎずくつろげる感じです。

内装はハウスボートによって様々ですが、この船の暖房は薪ストーブでした。そもそもハウスボートの冬はどうなんでしょうか。
今日は天気も良く外で過ごすには気持ちが良い日でしたが、ミュージアム内は暑かったです。もともとが船だから、家の通風などは考えられてないですね。

また船の構造上だと思いますが、窓が高い位置にしかありません。窓から見える街の風景が運河目線になるのは新鮮でした。
船の奥にはベッドルーム、シャワー、トイレもあり、立派な住宅でした。

そしてやっぱり揺れます。船ですからね。運河は普段は荒波はないのですが、このミュージアムは観光地に位置しているので、観光船が通過します。その度に若干ながらユラユラと。
三半規管の弱い人は長居できないですね。


アムステルダムにあるたくさんのハウスボート。それぞれが個性的です。
住人の方がハウスボートでの生活を楽しんでいる様子が船外やデッキに現れているように思います。
冬には凍った運河の上に椅子や机を運んで過ごす人もいるそうです。
運河沿いにハウスボートが並ぶ絵もまたアムステルダムの魅力の一つだと思います。

House Boat Museum概要(2017年7月現在)
10〜17時
9月〜6月のみ月曜休館
€4.50
ミュージアムカード不可(割引あり)
Prinsengracht 296K, 1016 HW Amsterdam, オランダ
House Boat Museum


*合わせて読みたいアムステルダム情報*

2017年8月7日 ”アムステルダムの歴史と街並み”

2017年8月14日 “アムステルダム最古の建築 Oude Kerk”

2017年8月28日 “アムステルダムの人工島”

2017年9月1日 特集”アムス観光 ダム広場”

2017年10月1日 特集”アムス観光 ミュージアムプレイン”

2017年12月1日 特集”オランダのクリスマス”