1930年代。
現在から約100年前は、世界恐慌、食糧不足、戦争、と不穏な出来事が多く起こった時代です。
1930年代の日本は、都市部に地下鉄が開通し、各家庭に電気・ガス・水道のライフスタイルが引かれるようになった昭和初期。
都市部の人たちは長屋に住み、小さな家に家族2世帯または3世帯が一緒に暮らしていた昭和時代。人々の暮らしは、ごはんを食べるのも寝るのも同じ部屋でした。
そんな1931年(昭和6年)にフランスでは20世紀の住宅の最高傑作と称される邸宅が完成しています。
邸宅の名前はサボア邸(Villa Savoye)。
パリから約30kmのところにある自然豊かな田舎町にある最高傑作の邸宅を一目見ようと世界中から見学者が訪れています。
サボア邸を見学
サボア邸(Villa Savoye)は、もともとはサボアさんの別荘として建てられた戸建て住宅です。
1931年に完成したサボア邸を設計したのはフランス建築家ル・コルビジェ(Le Corbusier)です。ル・コルビジェはのちにモダニズム建築の巨匠の1人と称される、建築界では誰もが知っている偉人です。
現在のサボア邸は国の歴史記念碑として保護されています。年間を通じて一般公開しているので誰でも見学する事ができます。
サボア邸の見どころ
コルビジェの初期の作品で最高傑作でもあるサボア邸には、コルビジェが提唱する近代建築五原則(ピロティ・自由な平面・自由な立面・水平連続窓・屋上庭園)がガッツリと取り込まれています。
今でこそ一般的な設計手法ですが、これが100年前に完成している事が驚愕です。当時も今でもコルビジェの影響力は多大で、そしてコルビジェがいたからこそ存在している現代デザインも多々あります。
サボア邸ではモダニズム建築のデザインの起源を体感する事ができます。
建物の存在を軽くするピロティ
浮いているような地上階のピロティはパルテノン神殿を現代風に表現しています。地上階の視線が通ることで建物の下のピロティも庭の延長として感じる事ができます。
広いピロティのある1階部分は玄関と階段、使用人の部屋などになっています。現在は見学者のエントランスになっていて、コルビジェの本が並べられてる売店が設置されています。
四角形の建物とは対照的な螺旋階段とスロープで2階へと上がる事ができます。
柱と壁と窓
建物の正面という概念がなく、4方向全てが正面になるようにデザインされているのが特徴的なサボア邸は宙に浮いているかのようなデザインです。
地上からまっすぐ延びる柱は建物の4隅より内側に配置されています。そのため2階部分が浮いているような軽い印象に感じられます。
柱が4隅に無いことで、外壁には建物を支える構造の役割がなくなっています。そのため外壁に多くの窓が取り付ける事ができ、建物全体に自然採光を多く取り入れる事を可能にしています。
構造とプランニング
外観からは想像できない建物内は、構造に捉われない設計です。柱を隠すように壁が設けられることはなく、場所場所の雰囲気や採光条件に適した部屋が各所に設けられ、必要最低限な壁を必要な場所にだけ建てている、自由感の高いプランニングです。
テラスと屋上
2階には広いテラスがあり、テラスからさらに上階の屋上へとのぼれます。
窓が多く開放的で外とのつながりが感じられる1階2階とは対照的に、テラスと屋上は外部とは遮断され空と繋がっているかのようなデザインになっています。
自然を削って人工物を立てた場所に、また新しい自然の様相を取り入れることもコルビジェ創案なのではないかと思います。
今では観光ガイドブックにも掲載されている観光地のサボア邸には、パリから1時間弱で訪れる事ができます。20世紀の最高傑作を一目見に立ち寄ってみてはいかがででしょうか。
コルビジェと建築
今から約100年前。日本では茶の間に布団を敷いて家族が川の字になって寝ていた時代に、フランス建築家ル・コルビジェ(Le Corbusier)は近代建築五原則(ピロティ・自由な平面・自由な立面・水平連続窓・屋上庭園)を提唱しています。
コルビジェは生涯に渡り「混雑した都市の住民により良い生活条件」を提供するべく、機能的で合理的なモダニズム建築を築いてきました。
コルビジェが亡くなるまでに建てた多くの建築は現在でも称賛されており、その多くが重要文化財として保護されています。
モダニズムの巨匠コルビジェの建築はオランダにはありません。しかし日本では見ることができます。
東京にある国立西洋美術館は1959年にコルビジェが設計した日本で唯一のコルビジェ建築です。