オランダ生活が5年目に突入しました。
ちょうど5年前の10月にスキポール空港に到着し、オランダで一番最初にした買い物はOV-chipkaartです。
OV-chipkaartとはオランダのICカード乗車券、日本でいったらSuica(スイカ)のような物なのですが、システムやルールが少し複雑になっています。
5年目になっても分かっていないOV-chipkaartについて調べてまとめてみました。
オランダの公共交通機関
オランダにある公共交通機関は、電車、トラム(路面電車)、バス、フェリー、メトロ(アムステルダムとロッテルダム)の5種類があります。
NS
オランダ国内を走る電車はNS.nlが運営する公共交通機関で、主にSprinter(スプリンター)と呼ばれる各駅停車の普通電車と、Intercity(インターシティー)と呼ばれる都市間を運行する特急電車があります。
Intercityは長距離型の電車で車内にトイレがあります。また1等席(グリーン車)と2等席(一般席)に別れており、1等席に座るには乗車券とは別に1等座席券が必要になります。
GVB
アムステルダムでは市営の公共交通機関GVBが管轄しており、アムステルダム市内の地下鉄・トラム・バス・フェリーはGVBが運営しています。
R-net
その他にもR-netと書かれたトラムやバスを多く見かけます。こちらも公共交通機関で、主にはバスを運営しているようなイメージです。
アムステルダムでは主に、NSとGVBとR-netが公共交通機関のことを指します。
切符とICカード乗車券
オランダの公共交通機関は有料です。(アムステルダムでは唯一フェリーが無料になっています。)
乗車するには切符を購入するか、OV-chipkaartと呼ばれるICカード乗車券を使います。(※2023年よりスマホで決済もできるようになりました。)
電車やメトロを利用するときは改札前の自動切符販売機で切符を購入することができます。
しかしトラムやバスの停留所には切符販売機が無いので車内の係員さんから購入することになります。(この時の支払いは現金が不可でPINかクレジットカード払いになります。)
切符購入で乗車する場合はトラムやバスは1時間乗車券や1日乗車券での購入となるため、短い距離しか乗車しない場合は割高な料金となってしまいます。
例えばアムステルダムのトラムの1時間乗車券は€3.20くらいだったと思います。
OV-chipkaartの場合は乗車距離によって金額が異なりますが、アムステルダム市内の移動であれば€1.60くらいな感覚です。(4歳以下のお子様は無料で乗車できます。)
オランダに長期滞在する場合はOV-chipkaartを作成したほうがお得で便利になっています。
OV-chipkaartの使い方
OV-chipkaartは2011年に導入されたICカード乗車券で、日本のICカード乗車券Suicaのように事前にチャージして乗車時または改札でタッチして使います。
電車や地下鉄の駅にはゲート式の改札があるので、改札に「入るため」と「出るため」にOV-chipkaartを機械にタッチして入出をします。
ゲート改札がない駅ではホームにOV-chipkaartのマシンがあるので、そこでタッチします。(改札が無いからといって切符無しで公共交通機関を利用した場合は見つかったら€50の罰金となります。)
トラムやバスでは、ドア付近にOV-chipkaartのマシンがあるので乗る時と出る時にタッチします。
改札に入るとき(車両に乗るとき)にタッチすることをCheck-in、改札を出るとき(車両から降りる時)にタッチすることをCheck-outといい、このどちらか一方でもタッチし忘れる、または正確にタッチできてなかった場合は自動的に€10の罰金がチャージされてしまいます。
特にトラムやバスでのCheck-outは忘れがちになってしまうので十分注意が必要です。
※罰金の回収方法については後半に記述しています。
OV-chipkaartの必要残高
日本のICカード乗車券Suicaは残高が不足すると改札が通れない仕組みになっています。
オランダのICカード乗車券OV-chipkaartは残高が€20以下になると罰金という厄介なシステムになっています。
例えば乗車料金が€15の区間を移動する時にカードに€15の残高があったとしましょう。この場合、乗車料金は賄えているけれど残高規定の€20は下回っているので罰金対象となってしまいます。
トラムやバスの場合は残高規定が€4と少し低めの設定になりますが、残高確認しないで駆け込み乗車した時、または近くにチャージする場所が無い時は罰金覚悟で利用することになってしまいます。
※罰金の回収方法については後半に記述しています。
OV-chipkaartの種類と特徴
罰金と隣り合わせのOV-chipkaartには2つの種類あります。
- Anonymous(匿名)OV-chipkaart
- Personal(個人)OV-chipkaart
どちらのカードも初期費用としてカードの取得に€7.50かかり、5年間の有効期限になります。
2つのカードの違いを、詳しく調べてみました。
Anonymous(匿名)OV-chipkaartの特徴
Anonymous(匿名)のカードは、日本のICカード乗車券Suicaとほぼ一緒で1枚を家族や友人と共有して使うこともできます。
窓口のある大きな駅ならどこでも誰でも購入する事ができるので、オランダの空港に到着して市街地まで電車移動する場合は駅の窓口でAnonymous OV-chipkaartと言えば購入可能です。
Anonymous(匿名)のカードは、駅の窓口以外にも自動切符販売機やスーパーマーケット、またはタバコ屋さんでも購入ができます。
Personal(個人)OV-chipkaart
Personal(個人)のカードは、カードの背面に証明写真・氏名・生年月日が記載された利用者が固定されるタイプで、譲渡や共有する事ができないカードになっています。
そしてPersonal(個人)のカードを作成するにはオランダの住所と銀行口座が必要となります。
Personal(個人)のカードには5つのメリットがあります。
- 口座引落設定で罰金を回避できる
- 紛失時にブロックできる
- 割引価格で乗車できる
- 交通費の請求書作成が容易
- 自転車の24時間レンタルが€4以下
口座引落設定で罰金を回避できる
Personal(個人)カードを銀行口座と結び付けて、自動チャージ(Automatisch opladen)機能をつける事ができます。
自動チャージはカードに十分な残金がない時に自動で口座引落決済される乗り物専用クレジットカードの様になるので、駅や窓口でトップアップする必要がなくなります。
口座引落金額は€10、€20、€50から設定でき、15日以内に口座から引き落とされます。
この機能をつければ残高規定€20の罰金になることがなくなりますし、カードの残高を気にせずに駆け込み乗車することが可能です。
紛失時にブロックできる
オンラインで申込むPersonal(個人)カードは、カード作成時にアカウント登録をし、銀行口座もリンクします。
なので紛失すると拾った人が勝手に電車に乗って使ったり、カード情報を不正利用する恐れがあります。
万が一、紛失した場合はアカウントからカード利用停止(Blokkeer kaart)を申し込む事ができます。
(Anonymous(匿名)のカードは紛失したら戻ってくることはありません。)
割引価格で乗車できる
NS.nlでは割引価格で乗車することができるサブスクリプションを提供しています。
筆者が使っているサブスクはWeekend Voordeel(週末割引)で土日祝日のみ40%オフの料金で利用できるプランです。
サブスク登録してから鉄道を利用することでアムステルダムからロッテルダムまで片道€10.74と通常価格(片道€17.90)よりも40%オフの運賃で乗車することができます。往復で€14以上も安くなるのは大きいです。
月額料金が€2.20ほどかかりますが、割引額の方が大きいので十分な節約になります。
その他にも平日に利用したい場合は平日+週末割りサブスク(Dal Voordeel)でも最大40%オフの運賃になります。
そして遠出するなら週末乗り放題サブスク(Weekend Vrij)です。月額€34.95で週末は乗り放題のプランになっています。アイントホーヘンやフローニンゲンなど遠くの都市へお出かけするなら断然お得なサブスクになっています。
このNSのサブスクの良い点は使わない月はサブスクを解除できること。遠出する予定がある月にサブスク登録して、しばらくは出かけないやって時には月額€0のBasisプランに変更することで無駄な月額料金を支払う事を回避できます。
初期設定に€10ほどかかりますが1回でも遠出すれば回収できる初期費用です。オランダ各地を移動・観光する前に登録しておきたいサブスクです。
交通費の請求書作成が容易
OV-chipkaartはアカウントから利用履歴を見る事ができ、事業や会社に交通費として請求できる請求書作成システムが付いています。
Personal(個人)カードではこの請求書に登録した氏名と住所が表示されるようになっています。
自転車の24時間レンタルが€4以下
Personal(個人)カードがあれば、OV-Fietsと呼ばれる貸し自転車を24時間あたり€ 3.95でレンタルすることができます。
大きな駅にはホボOV-Fietsがあるので、観光でロッテルダムに訪れた時に、デン・ハーグ駅から大使館へと行く時に、などとレンタルして使うことができるので便利です。
OV-Fietsの設置場所は下記から検索できます。
OV-Fietsは便利ですが、鍵をかけずに駐輪して盗難にあったり、故意な損傷があった場合は別途料金がかかるので気をつけましょう。
その他の得点としては、Personal(個人)カードを使えばチェックインから60分以内に同じ駅でチェックアウトする場合は無料なので、家族や友人を駅で見送ることもできます。
またほとんどの駅にあるFietsenstallingenと呼ばれる駐輪場が24時間無料で使う事もできます。
OV-chipkaartのトップアップ
Anonymous(匿名)カード、そしてPersonal(個人)カードで口座引落設定にしていない場合にはOV-chipkaartのトップアップ(入金)が必要です。
駅の切符販売機でチャージすることができますが、切符販売機はNS電車の駅にしかありません。バスやトラムの停留所には販売機が無く、残高€4以下でバスやトラムに乗車すると罰金になってしまいます。
そんな時はお近くのスーパーマーケットAlbert Heijnか、タバコ屋さんや本屋さんに訪れてみてください。店内に黄色いチャージ機があります。(設置していない店舗もあります。)
黄色いチャージ機で残高確認やトップアップが行えます。(支払いはPINのみです。)
黄色いチャージ機の使い方は至ってシンプルです。④のところにOV-chipkaartを差し込み、②のディスプレイよりTop-Up Balanceを選択します。入金する金額を選んで⑤にデビットカードを入れて支払いです。
OV-chipkaartのオンラインアカウント
Personal(個人)カードの申込みや各種設定はOv-chipkaart.nlから設定できます。アカウント登録することで残高確認や利用履歴、設定変更などができます。
Anonymous(匿名)カードも登録する事ができます。カードの背面の16桁の番号を入力すると登録できます。
OV-chipkaartの罰金回収方法
残高規定不足や下車時にタッチするのを忘れて罰金となってしまった場合、払い戻しを申請する事ができます。
ただし15日以内と日数指定があるので「タッチし忘れたかも?」と思ったらまずはアカウントから利用履歴を確認して、罰金額を支払っていたら払い戻しを申請しましょう。
※Ov-chipkaart.nlでアカウント登録した場合は、タッチし忘れた時のお知らせメール受信設定もできるようになっています。
払戻し申請方法
払戻しフォームにアクセスします。
カードの背面の16桁の番号と、有効期限を入力して次に進みます。
生年月日を入力して次に進みます。
罰金となった支払いがある場合は、その日付と詳細が表示されるので払戻しをリクエストします。
指定した口座に14日くらいで入金されます。(登録したメールアドレスに支払いましたのお知らせが来たと思います。)
OV-chipkaartの更新と解約
カードの有効期限は5年間で、更新と解約はOv-chipkaart.nlから行うことができます。
解約する場合、カードに残っている残高は指定した銀行口座に後日振り込みされます。
あとがき
筆者は最初に匿名のカードを作り、後々に個人カードを作りました。今では個人カードしか使っておらず、匿名カードは友人が遊びに来た時などに貸しております。
今では自転車がメインなので月数回くらいしかOV-chipkaartを使うことがありません。カードの残高を覚えていられないので個人カードの口座引落設定にして良かったと思っています。
オランダに来た当初は匿名のカードだったので、黄色いチャージ機でトップアップしていました。
最初は使い方が分からず5分くらい占領してしまい、筆者の後ろに5人くらいお待ちいただくという恥ずかしい思いもしました。
トップアップをしてなくて罰金を連発したこともありました。
失敗があったから学べた事も多かったです。
旅行でもそうですが、知らない土地で公共交通機関に乗車するのってドキドキしますよね。そんな時の参考になればと思ってOV-chipkaartについてまとめてみました。
2022年か2023年にはOV-chipkaartがアプリになるようです。そしたらカードを持ち歩かなくとも、スマホで「ピッ」っと乗車できるようになるので益々便利になりそうです。
OV-chipkaartを使いこなしてオランダ観光を楽しんでみてください!