2022年で7回目を迎えた10年に1度の国際園芸博覧会・フロリアードがオランダで開催されています。
園芸については全く詳しくないのですが、会場構成の建築物やパビリオン、展示されているアート作品などがとても気になっていたので、さっそく行ってきました。
10年に1度なだけあり見応え満載な園芸博覧会でした。
情報量がとても多かったので、数回に分けてまとめてみます。
・フロリアード徹底ガイド
・フロリアードで見逃せない建築とアート
上記3つのトピックに分けての特集です。
今週は「フロリアードとは?」をテーマに書きました。園芸博覧会ってなんなのか、どんな展示があるのか、コンセプトなどを公式ホームページを参考にまとめました。
フロリアードは2022年10月9日まで開催されていますので、ぜひとも足を運んでみてください。
フロリアードの歴史
戦後にヨーロッパの園芸家たちによって国際園芸家協会 (AIPH) が設立され、1960年にロッテルダムで初めての国際園芸博覧会が開催されたのがフロリアードの始まりです。以後ヨーロッパ各地で定期的に園芸博覧会が催されています。
国際園芸博覧会は世界中の園芸生産者の利益と技術の向上をはかるために開かれており、オランダでは10年に1度のスパンで開催されています。
オランダ・フロリアード開催地
1960年 ロッテルダム
1972年 アムステルダム
1982年 アムステルダム
1992年 ハーグ・ズータメア
2002年 ハールレマミーア
2012年 フェンロー
2022年 アルメール
ロッテルダムのユーロマストは1960年のフロリアードの際に建設された展望塔だよ!
アムステルダムのアムステル公園は1972年のフロリアード開催地のために建設された公園ですね。
2022年のテーマ
2022年のフロリアードは「Growing Green Cities(成長する緑の都市)」というテーマを掲げています。
博覧会ではグリーン・イノベーション(技術革新)によって、都市をより楽しく・住みやすく・持続可能なものにする可能性を様々な角度から探っています。
より環境に優しく、より健康的な生活を送れるようにと、4つのサブテーマが設けられています。
サブテーマ
・Greening the City(都市の緑化)
・Feeding the City(都市への給餌)
・Healthying the City(都市の健康)
・Energising the City(都市の活性化)
1.都市の緑化(より多くの緑)
自然豊かな街は住みやすい都市となります。しかし雑草が生い茂っている様は計画緑化とはなりません。どのような樹木を植えて育てることが、より良い都市緑化へと繋がるのか、フロリアードで知識を共有することができます。
2.都市への給餌(食料供給の改善)
テクノロジーの発展により、都市部でも食料生産を行える技術があります。実験的な農業と園芸、都市部での農業、人工的に生産された食品、そして栄養・健康を考えた持続可能な食料生産。農業の分野で解決策を提示しています。
3.都市の健康(より意識的な生活)
きれいな空気、水、土壌は人々を身体的にも精神的にも健康へと導いてくれます。フロリアードではクリーンな環境維持も見つけることができます。
4.都市の活性化(スマート・エネルギー)
世界人口の増加に伴いエネルギー需要も増加している中で、持続可能なエネルギーは不可欠です。エネルギーを生成、貯蔵、節約するための新しいエネルギー源を紹介しています。
展示コンセプト
緑の祭典
フロリアードは環境に配慮した持続可能な技術を祝う博覧会です。自然、食物、エネルギー、健康のための新技術を見て、知って、考えることができます。
美しい庭園、ワークショップ、展示会、アトラクション、試飲、芸術、文化、と様々な要素を通じて素晴らしい緑の環境を体感する博覧会です。
スーパーヒーロー
自然分解できないコンクリート、ガラス、鉄鋼に満ちた世界では、園芸が住みやすい環境作りの鍵となります。
庭師からアスパラガス栽培者、温室の技術者と、園芸業界で働く人々はスーパーヒーローです。フロリアード2022ではスーパーヒーローにふさわしいステージが用意されています。
10年に1度の国際園芸博覧会には、すべての園芸の偉人が集まります。世界中の専門家がフロリアードに集まり、都市をより楽しく、美しく、持続可能なものにするグリーン・ソリューションを紹介します。
フロリアード2022では400人を超える参加者が、最新のグリーンイノベーション、ソリューション、アプリケーションを紹介しています。
最先端のソーラーパネルや外壁緑化などの建築デザインから、トマト生産の最良の方法、最新の剪定技術まで、見て、味わって、体験することができます。
体験と実現
フロリアード2022は専門的な技術の展示会だけではありません。敷地内では自然の素晴らしさを楽しむこともできます。
たくさんの花が植えられており、美しい庭園がデザインされている樹木園を散歩したり、健康と環境に配慮した料理を堪能したり、様々なアート鑑賞を楽しむことができます。
フロリアードで一日を過ごした後は、たくさんのインスピレーションに満たされ、お庭やバルコニー、リビングルームをどのように彩るか、アイディアがあふれるでしょう。ご自身で園芸を始めることも、緑豊かな街づくりの第一歩になります。
デザインコンセプト
フロリアード2022のマスタープランは建築集団MVRDVによって設計されました。植物の多様性や、緑がある生活の喜びに焦点を当て、持続可能な都市緑化のベースを提案しています。
約60万㎡と、東京ディズニーランド(約51万㎡)よりも広大な敷地はグリット状に区切られて整備されており、5つのエリアに分けられています。
・Urban District(アーバン区)
・Hortus Avenue(ホルトゥス通り)
・Utopia Island(ユートピア島)
・Green Island(グリーン島)
・Eco District(エコ区)
それぞれのエリアごとに各テーマに沿った展示がされています。
Urban District(アーバン区)
このエリアには各国のパビリオンが集まっています。環境への取り組みや、庭園、特産品などと国ごとに様々な展示がされています。
パビリオンは独創的なデザインだったり、環境に優しいバイオベース建材などが使われたりしています。
Hortus Avenue(ホルトゥス通り)
Hortusとはラテン語で植物や公園、庭園、菜園などの「緑のある園」を意味するそうです。このエリアでは食をテーマに取り上げています。最新の生産技術やエコフード、未来の食などの展示が多いです。
レストランでは新鮮なビーガンフードを食べることができます。
Utopia Island(ユートピア島)
このエリアには木材を使ったアートワークが多く展示されています。子どもたちが遊べる遊具があったり、写真映えする芸術作品や風景が広がっています。
Green Island(グリーン島)
敷地内で最も緑豊かで、小鳥のさえずりが響き渡るエリアです。小さな庭園が並んでおり様々なアート作品が自然とコラボレーションしています。
ハンモックやブランコ、ベンチなどに腰掛け、長閑なひと時を過ごせるスペースが豊富です。
Eco District(エコ区)
ヨーロッパの王宮庭園を想像させるようなデザインガーデン っとなる予定なようですが、残念ながら5月上旬の段階では工事途中でした。(小さなチューリップガーデンを見ることができました。)
今後に手入れが進んでいくようです。
緑化コンセプト
敷地には4万本の低木、20万本の多年生植物、100万個の球根が植えられています。
これらの植物と樹種はラテン語の植物名でアルファベット順に植えられています。敷地の北西から頭文字がAの植物が植えられ、南東に頭文字Zの植物が配置されています。
アルメールの緑化計画
フロリアード2022の開催地であるアルメール市は、アムステルダムの東約30kmの位置にあり、1968年より干拓がはじまったオランダで最も新しい都市です。
もともと湖だった土地を8か月以上に渡って排水して造成された干拓地で、総面積が約250k㎡のうち陸地が130k㎡と、アルメール市の土地の半分は湖や運河などの水面となっています。
海抜マイナス2〜5mと海面下都市のアルメールは、現在も高性能ポンプを24時間稼働して排水をしています。
市民の半数以上が40歳以下と若い層が集まるアルメール市の人口は約20万人です。2030年までには人口35万人を超えるであろうと想定されており、現在は区画整備や住宅建設が進んできます。
フロリアード会場も博覧会終了後に住宅地へと整備されることになっています。
グリット状に構成された博覧会会場の敷地構成をそのまま利用し、低層住宅と緑化計画が施され、新しいカタチの緑の住宅地へと生まれ変わる予定です。
博覧会跡地に区画整備される住宅地は、都市と自然の共生、建物に対する植物の影響がどのように作用するかなどの試験的な取り組みも含めて注目されています。
フロリアードのレビュー
フロリアードがオープンした2022年4月14日、オランダ国王もオープニングセレモニーへと来賓されましたが、オープン時は至る所がまだ工事中だったそうです。
4月中の来場者は工事中の多さに落胆し、現在のところのレビュー評価は低くなっています。
筆者が訪れた5月上旬は、エコ区やホルトゥス通りの多くがまだ作業中でした。そのほかのエリアでも何も無い空き地のようなところが点在していましたが、全体の様相としては緑生い茂る博覧会の印象を受けました。
今年の春は天気に恵まれたため、樹木や芝生が青々としていました。もう少し色とりどりのお花畑が見たかったところもありますが、植物よりもアートや建築を目的に訪れたので、筆者的にはとても楽しむことができました。
連休明けの平日に訪れたので、観光客はまばらで、各パビリオンはゆっくりと見てまわることができました。またカフェやレストランも空いていました。
5〜6月は閑散期なため混雑を避けて見てまわることができると思います。
7〜9月は繁忙期となるので各パビリオンの入場に並ぶ可能性があります。しかし夏の繁忙期までには現在作業中の庭園なども完成すると思うので、今よりももっと素敵なフロリアードを楽しむことができるのではないでしょうか。
フロリアード2022開催概要
開催期間:2022年4月14日〜2022年10月9日
開園時間:10時〜19時
入場料金:€29〜
URL:Floriade.com