アムステルダムに新しくオープンした国立ホロコースト博物館。
3月10日に開館式典が催され、オランダ国王やイスラエル大統領が訪れたそうです。
3月11日より一般公開が始まったので行ってきました。
政治的・宗教的な話題は別として、博物館の展示はとても興味深い内容でした。小さな建物でしたが、展示内容は量も密度も濃く、まるでドキュメンタリー映画を見てきたような体験でした。
国立ホロコースト博物館
2024年3月10日にオープンした国立ホロコースト博物館(Nationaal Holocaustmuseum)は、第二次世界大戦で迫害を受けたユダヤ人に焦点をあてた展示をしています。
ホロコーストとは、ナチスがユダヤ人などに対して組織的に行った絶滅政策・大量虐殺を指します。第二次世界大戦中はオランダでもユダヤ狩りが行われていました。
オランダと第二次世界大戦
1940年5月10日にドイツ軍のオランダ侵攻が始まり、5月14日にはロッテルダムが大空襲で跡形もなくなってしまいます。そして同年の5月15日にはオランダ全土はドイツ軍占領地となってしまいました。
ユダヤ人の友人や隣人、または自分と家族が突然に迫害対象者になる悲劇は終戦までの5年間も続きました。
オランダではアンネ・フランクの話が有名ですが、アンネのように収容所へと送られ命を落としたユダヤ人はオランダだけでも10万人以上もいたそうです。
国立ホロコースト博物館では、オランダに住んでいたユダヤ人の戦前・戦中・戦後のそれぞれの瞬間にクローズアップされた展示がされていました。
秘密の建物
国立ホロコースト博物館のある場所は、もともとは職業訓練学校でした。そして学校の隣には保育園が隣接していたそうです。
第二次世界大戦中に、この訓練学校によって約600人のユダヤ人の子供たちが生き延びる事ができました。
1942年頃からオランダでもユダヤ人の召集が始まり、老若男女関係なく大人から子供まで収容所へと送還されていました。
せめて小さな子ども達だけでも助けたい一心で、ユダヤ人の子ども達を密かに逃亡させる計画がこの訓練学校で行われてたそうです。
展示
国立ホロコースト博物館の展示は3フロアありました。1階はモニュメントと博物館がオープンするまでの10年の歴史などの紹介コーナーでした。
メインの展示室は2階と3階にありました。
身につけていたアクセサリーや子ども達のおもちゃなど、1つ1つが丁寧に展示されており、こんな人が生きていたんだって感じる内容の展示が多かったです。
写真や映像の展示が多く、80年前の人がどのように生きていたのかを垣間見る事ができました。中には残忍な映像もありましたが、テレビや教科書では映されないリアルな光景でした。
1940年から1945年までの出来事が壁一面に事細かに書かれていました。これを読むだけでも興味深かったです。(展示は全てオランダ語と英語、オーディオガイドも同様でした。)
建物はそこまで広くはありませんでしたが情報量がとても多く、全部を細かく見ていくと栄養過多になりそうでした。
見終わった後はメンタル的な疲労感が強く、このあともう1つ美術館へ行こうと予定していたけれど取りやめました。
ホロコースト記念碑
国立ホロコースト博物館の道を挟んだ向かい側にある旧劇場(Dutch Theater)は、強制収容所に移動させられる前のユダヤ人が収容されていた場所です。
逃げ延びた600人のユダヤ人の子ども達のご両親は、この旧劇場に収容され、ここから強制収容所へと移送されました。約4万6千人のユダヤ人がここから強制収容所へと送られたそうです。
現在の旧劇場は戦争の犠牲になったユダヤ人の哀悼の意を捧げる場所です。建物の奥にある中庭にホロコースト慰霊碑が建てられています。