スペイン北部のビルバオは建築とアートの街。ずっと訪れてみたかった都市です。
歴史建造物と近代建築が隣り合うビルバオで、ランドマークとなっているのがビルバオ・グッケンハイム美術館です。
グッケンハイム美術館はThe Guggenheim(ソロモン・R・グッゲンハイム財団)が運営する美術館で、第一号がニューヨークのグッケンハイム美術館です。
イタリアのペギー・グッケンハイム美術館に続き、スペインのビルバオ・グッケンハイム美術館は現在では第3号のグッケンハイム美術館にあたります。
建物のコンセプト
1997年に完成したビルバオ・グッケンハイム美術館(Guggenheim Museum Bilbao)は、インパクトある建物が特徴で、2027年には30周年を迎えるのに今だに新しさすら感じるデザインです。
そんなビルバオ・グッケンハイム美術館はNYのグッケンハイム美術館の分館にあたります。
1959年に完成したNYのグッケンハイム美術館はフランク・ロイド・ライトが設計した美術館です。
巨大な吹き抜けと螺旋状の通路が特徴的な建物で、螺旋通路が展示スペースにもなっているコンセプトは当時では斬新で、新しい美術館の概念を提案したライトの代表作の一つとなりました。NYのグッケンハイム美術館も今だに新しさを感じる美術館です。
ビルバオ・グッケンハイム美術館は設計デザインがコンペティションで選ばれた建物です。当時スペインで人気があった日本の建築家の磯崎新さんも設計競技に参加していました。
財団が要求するデザイン案の条件は「誰もが見たことない美術館」、そして「NYのグッケンハイム美術館のような巨大な吹き抜け空間」の2つでした。この2つを独創的にデザインし、世界中から応募が集まったデザイン案から1位を勝ち取ったのがフランク・ゲーリーでした。
グニャグニャの建物
当時も、そして現代でも見たことのないような外観のフランク・ゲーリー建築は、戦闘機を設計するCADシステムを利用して図面を作成したそうです。
今でこそ3Dで設計図を作成できる時代ですが、当時はパソコンで図面をかくCADシステムがリリースされたばかりの頃。まだまだ手書きの図面も主流の時代でした。
そんな時代にデザインし、そして建設した技術とアイディアに驚嘆してしまいます。
そしてさらに驚いたのは建設工事に遅れが一切なく、費用は予算内に納まり予定通りに完成したことw。現代の住宅工事でも普通に完成が遅れ、追加予算がかかるのが当たり前の海外の建設事情で、全部が予定通りなことが信じられない出来事だと思います。
それだけでも特別賞を得られそうですが、ビルバオ・グッケンハイム美術館のデザインと建設技術は世界中から「建築の偉業」と賞賛されました。そして建築界のノーベル賞と呼ばれるプリツカー賞を受賞しています。
ビルバオの救世主となった美術館
工業都市として発展してきたビルバオは1980年代に入ると産業が衰退しはじめました。そんな時に完成したビルバオ・グッケンハイム美術館は、まさにビルバオの救世主。美術館の経済効果は凄まじく、観光業が一気に発達し、ビルバオ・グッケンハイム美術館によって都市は息を吹き替えしました。
以前は年間2万5000人ほどの観光客数だったビルバオは、美術館がオープンしてから10年ほどで年間61万5000人と約25倍にも増加しています。
もしもビルバオ・グッケンハイム美術館が建設されてなかったら、もしくはフランク・ゲーリーがデザインしていなかったら、今のビルバオはなかったかもしれません。
たった1つの美術館が1つの街を立て直すきっかけとなった偉業です。デザインとアートの源を感じます。
実際に目にすると、純粋に「すげー」と口にしてしまう感動がありました。1つの都市に莫大な影響力を与えてることが一目で理解できる素晴らしい美術館でした。
屋外展示のパピーとママン
ビルバオ・グッケンハイム美術館の前にある巨大な犬のパピー(Puppy)は、アメリカ人アーティストのジェフ(Jeff Koons)さんの作品です。
パピーはビルバオ・グッケンハイム美術館を象徴するアートで、渋谷のハチ公的な存在の愛されキャラです。
高さ12mもある巨大なパピーは7万本の生花で彩られています。2.5トンの土でできているパピーちゃんは常に一定量の水を得られる灌漑システムが組み込まれているので、いつ訪れてもお花畑な姿で見ることができます。
美術館の裏側にある巨大な蜘蛛のママン(Maman)は、ルイーズ(Louise Bourgeois)さんの作品です。
こちらは六本木ヒルズにある蜘蛛のママンと同じ作品です。
ママンは世界各地にあるので、カナダやイギリスでも同作を見ることができます。見るたことあるアートと同じものが違う国で見れるのは不思議な体験です。
空間展示と近代アート
巨大な展示スペースを持つビルバオ・グッケンハイム美術館は、その広さと建物の異形を上手に使った遊び心ある常設展示が多くて楽しめました。
絵画に興味がない方や、子どもでも楽しめるような、鑑賞というよりはアートを体験するスタイルの美術館だと思います。
常設展に対して企画展示はTHE美術館よりでした。グッケンハイム美術館を代表するコレクションのポップアート展がちょうど開催中で見ることができました。
その他にも草間彌生さんの空間展などと、独創的な展示が多いビルバオ・グッケンハイム美術館。建物と展示の両方を心ゆくまで楽しむことができました。
所要時間2時間くらいが目安です。見学後はミュージアムショップも覗いてみて下さい。限定品など素敵なお土産を見つけることができます。
お帰り前にミュージアムカフェでバスクチーズケーキやピンチョスでお茶タイムも楽しんでみてください。