海外の建築巡りをする上で、ぜひとも立ち寄りたいのが本屋や図書館です。
インターネットが栄える前までの情報や知識の源は書籍でした。
本の並べ方、本を選ぶ空間、本を読む場所、本を手に取るまでのアプローチ方法は文化によって大きく違いが現れます。
海外のブックセンターでは本との向き合い方、本との接し方が日本とは全く異なるため、その建物のコンセプトやデザインがとても斬新で素敵に感じることが多いです。
マーストリヒトにある天国の書店ドミニカネン(Boekhandel Dominicanen)もその一つで、教会をリノベーションしたとても美しく神秘的な図書館になっています。
そして本日ご紹介するのはロッテルダム南西にあるスパイケニッセ(Spijkenisse)という小さな町にあるピラミッド型の大きな図書館。
MVRDVが設計し、2012年に竣工したBook Mountain「本のお山」と呼ばれているライブラリーです。
*図書館の許可を得て撮影しています。
スパイケニッセ図書館(ブックマウンテン)
スパイケニッセ駅から商店街を通り抜けた先にあるガラス張りの三角屋根の建物は、街のシンボルとなり、ランドマークとして町民が集まる図書館となるように建てられました。
建物には環境教育センター、チェスクラブ、講堂、会議室、商業オフィス、カフェと、図書館以外の用途も含まれた複合施設になっています。
建築様式
<Book Mountain 模型>
敷地は広場と隣接しており、また隣には歴史ある教会が建っています。
図書館は9300㎡と広い面積ですが、外壁のほとんどをガラス張りとすることで周辺への圧迫感を減らしています。
外壁のガラスを支えるのは立派な木造の大梁。これはオランダの典型的な農家の屋根組をベースにした構造になっています。(かつてはこの地域には大きな農場が沢山あった時代背景があります。)
インテリアがメインのデザインとなっているので、建物の構造はシンプルな設計になっています。
本の山
<コンセプトスケッチ>
図書館のメインとなるのが書籍。スパイケニッセ図書館は1万5千冊もの書籍スペースがあります。
その本棚がピラミッドのように構成されているのがブックマウンテンの最大の特徴です。
全長480mの本棚が5階にわたって積み上がっている光景はまさしくお山。
そのお山はまさに知識の山を表している印象を受けました。
日が暮れるとライトアップするので、屋外からも本のお山を見ることができます。
(今回は時間が合わず夜景を見ることができませんでした。)
紫外線
紫外線が書籍にダメージを与えるためガラス張り建築の図書館は世界的に少ないです。
スパイケニッセ図書館の多くの書籍は既に古いためデリケートな本が少ないこと、また日光が多く当たる場所は定期的に本を交換して対処するなどとの図書館側の協力もあり、Book Mountainの建築デザインが採用になったようです。
また図書館なので多くの人が沢山の本を借りてくれれば、それだけ紫外線ダメージも減るだろうという、読書を促がす観点もあるらしいです。
ガラス張りの明るい図書館は町の図書館だからこそ実現できた設計となっています。
エコ建築
ブックマウンテンの本棚は、植木鉢をリサイクルして作られています。
全ての棚や手すり、カウンターなどがリサイクル植木鉢で作られており、サスティナブル・安価・耐火性能なのが特徴になっています。
また外壁に使われているガラスやレンガ、そして構造材の材木も建て壊したときにはリサイクル品として使える要素を持っています。
<設備スケッチ>
冬季は床暖と二重ガラスで暖をとり、夏季は大梁がルーバーの役目を果たし、さらにピラミット上部の窓が開いて自然換気が取れるようになっています。
またこのプロジェクトでは、雑排水をリサイクルするため地下に雨水タンクが設置されています。
これらの設備配管はピラミッドの内側のスペースを利用して設計されているので、図書スペースには全く設備ダクトがなく広々とした空間になっています。
こんな素敵な図書館が近所にもあったらいいのになぁ。
見学・撮影するときは図書館員さんに許可をとってからにしましょう!